NO LIFE

NHKのSマックイーン特集は本当によかった。
彼の晩年の生き方は正に私が彼をイメージする生き方。

家も持たずトラックで旅をする。
そんな姿に私はその日朝まで興奮を抑える事が難しかった。

行こう

そう決めるのに時間はかからなかった。
仕事は時計の針が零時を指す前には終わらせた。
二つくらいの予定をキャンセルし、家に帰るとシャワーを浴び、取りあえず
釣り道具と寝袋を車に放り込んだ。

キャンセルした仕事のことなど後でどうにでもなるだろうが、今この気持ちを
どうにかするのはあの場所しかない。

どんどん低くなってゆく道路の外気温表示は私の冒険心を必要に煽っていった。

３時間の行程に私は何度も彼の顔や言葉を思い出した。
冒険をするのは今しかないのだ。

真っ暗な現場は毎年と同じ匂いがしていた。
手を伸ばせば冬に手が届きそうな、そんな感じだ。
寂しくはない。
あと数時間すれば、ここは目の色を変えた冒険者達で埋め尽くされるのだ。

私は久しぶりに潜り込むシュラフの暖かさに包まれながら、ささやかな乾杯をし
まどろみの中に深く深く沈んでいった。



疲れていたのだろう、いつもなら周りの喧噪で起床時間よりも早く起きてしまうのだが、
聞こえているのは起床時間を知らせるタイマーではない。

コンコン　　コンコン

車の窓を叩く音だ。
薄らと目を開くと、柔らかい、夏のそれとは違う陽光が広がっていた。
さあ、始まるのだ。

窓の外には一人の初老の老人が立っていた。
彼も釣り師だろう。
私はドアを目一杯開けると、大きく息を吸い込み挨拶をした。

なぜかその後の事を私はあまり記憶をしていない。
老人が何か言った
そう、とても大切なことを
私は周りを見渡した
見覚えのある広く開けた河原に生えた秋の草が風に揺れていた事

まぶしい　　　朝日

気がつくとiPhoneのWEBページが開いたままだった

＞延期です。萩原大物マス釣り大会　１１月７日です。
＞飛騨萩原大物マス釣り大会 　　11月7日に延期です。
＞大物としては一番大きなものがいる。40-60センチ
＞マス800kg　大物含む　
＞釣り・ルアーフライ専用区あり
＞・・・

誰もいない草原

今、私は「栄光のルマン」を観ている